故意に交通事故を起こした場合

 交通事故が発生した場合には、保険金を受け取ってそれを自動車の修理や怪我の治療に充てるのが自然な流れです。しかし、事故が故意であった場合はなかなかそうも行きません。何故なら任意保険の多くは、故意によって発生した事故に対して保険金を支払わないと定めているからです。もし、故意による事故で保険金を支払うとすると、お金目当てで故意に事故を何度も起こしてしまう方が現れるかもしれません。

 そこで保険会社では故意の事故は賠償しないと決めています。ところが、これは故意に事故を起こされた方からすると非常に厄介な話です。故意に事故を起こされた側には過失がなく、保険金を受け取る権利があっても不思議ではありませんが、故意の事故と見なされる限り受け取ることは出来ません。もちろん、事故が故意であったかどうかは簡単に判断できるものではありません。加害者の供述も非常に重要となります。ただ、交通事故の場合ではタイヤ痕やブレーキ痕、ドライブレコーダーなど複数の証拠が残るため、故意である場合はほとんど見抜かれると言って良いでしょう。故意で起こされた事故は事故というより、殺人未遂であるためいわゆる事件となります。事件となって有罪という審判が下されると加害者から慰謝料や賠償金を受け取ることとなります。しかし、加害者に支払い能力が無い場合はそれも難しくなります。故意の交通事故であれば罪も重く加害者は懲役刑が科される可能性が高まります。

 すると、被害者への賠償を働いて返すことは困難となってしまいます。では任意保険の保険金が出ない時にはどうするべきかというと、自賠責保険に頼るのが一番です。自賠責保険では事故が故意であっても、無くても保険金を受け取ることが基本的には可能です。また、それでも足りない場合は加害者の責任を民事裁判にて追及することも考えられます。また、「犯罪被害者給付金制度」を活用することも視野に入れて行動する必要があります。